パーキンソン病とはどのような病気かご存じですか?パーキンソン病は神経難病の中で最も患者さんが多く、研究が進んでいる病気です。根本的治療法がなくて治療が長期にわたることから、療養環境改善を目指した様々な公的支援制度があります。また、厚生労働省の指定難病もされています。ここでは、パーキンソン病とは何か、症状や特徴、治療法、難病指定、公的支援制度などについて解説していきます。

 

■パーキンソン病とは?原因は?

パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン神経細胞がこわれて、作られるドパミンが減ることによって発症します。私たちの体は、大脳皮質からの指令が筋肉に伝わることによって動いています。この大脳皮質の指令を調節し、体の動きをスムーズにしているのがドパミンです。ドパミン神経細胞は、年齢とともに自然に減っていきますが、パーキンソン病の人は健康な人に比べてより速いスピードで減ってしまいます。

高齢になるほどパーキンソン病を発症する割合が増えますが、40歳以下で発症することもあります。患者数は10万人に100人~150人くらいですが、60歳以上では10万人に約1,000人と多くなっています。日本では男性よりも女性のほうが多いとされています。家族性(遺伝性)は5-10%で、大半は非遺伝性です。

 

■パーキンソン病の症状は?

パーキンソン病の症状には、運動症状非運動症状とがあります。パーキンソン病によく似た症状が現れる病気をまとめて「パーキンソン症候群」といいますが、これらは治療法が異なります。

 

①運動症状

パーキンソン病の発症初期からみられる特徴的な症状で4つの種類があります。

【無動】

・動きが素早くできない

・すくみ足

・話し方に抑揚がなくなり声が小さくなる

・書く文字が小さくなる

 

【筋強豪】

・肩、膝、指などの筋肉が固くなりスムーズに動かしにくい

・痛みを感じる

・顔の筋肉がこわばり、無表情にみえる

 

【静止時振戦】

・何もしないでじっとしているときにふるえる

・片方の手や足のふるえから始まることが多い

・睡眠中はふるえがおさまるが、目が覚めるとふるえが始まる

・1秒間4~6回ぐらいふるえる

 

【姿勢反射障害】

・体のバランスがとりにくくなり、転びやすくなる

・歩いていて止まれなくなる、方向転換をするのが難しい

・症状が進むと、首が下がる、体が斜めに傾く

 

②非運動症状

非運動症状はいくつか種類があり、運動症状の前に現れるものもあります。

【自律神経症状】

・便秘

・頻尿

・立ちくらみ

・食後のめまいや失神

・発汗

・むくみや冷え

【認知障害】

いくつかの手順がある行動が計画できなくたったり、物忘れがひどくなるなどの認知症症状がでます。

 

【嗅覚障害】

匂いが感じられなくなる

 

【睡眠障害】

不眠や日中の眠気が起こる

 

【精神症状】

・うつ、不安などの症状

・アパシー(身の回りのことへの関心がうすれてしまったり、 顔を洗う、 着替える、といったことをする気力がなくなったりする状態)

・幻覚や錯覚

・妄想

 

【疲労や疼痛、体重減少】

・疲れやすい

・肩や腰の痛み

・手足の筋肉痛やしびれ

・体重の減少

 

■パーキンソン病の診断

パーキンソン病かどうかを調べるには、脳神経内科の受診が良いとされています。診断手順として、まず問診を行い症状の経過や家族歴、他の病気の有無、飲んでいる薬の有無などを調べます。その後、診察で症状の確認や症状の程度を見ます。次にCTMRIで脳の画像検査を行い、パーキンソン病に似た症状を示す病気がないかを確認します。パーキンソン病は血液検査や脳のCTやМRIでは異常は現れません。診断は、症状から判断し、他の疾患ではないか、何かの薬の副作用ではないか、つまりパーキンソ病と似ている病気でないかを確認し除外していきます。そのうえでパーキンソン病の薬を試してみて有効であればパーキンソン病と臨床診断します。

 

■パーキンソン病の重症度分類

パーキンソン病の進行度を示す指標として、「Hoehn & Yahr(ホーン・ヤール)の重症度分類」「生活機能障害度分類」があります。

 

①ホーン・ヤールの重症度分類

Ⅰ度:身体の片側だけ手足の震えやこわばりがある。身体の障害はない、又はあっても軽い。

Ⅱ度:両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがある。日常生活や仕事がやや不便になる。

Ⅲ度:小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが介助なしに過ごせる。

Ⅳ度:立ち上がりや歩行が難しくなり、生活場面で介助が必要になる。

Ⅴ度:車椅子が必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。

 

②厚生労働省の生活機能障害度分類

Ⅰ度:日常生活、通院にほどんど介助がいらない。

Ⅱ度:日常生活、通院に部分的な介助が必要になる。

Ⅲ度:日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけでの歩行や立ち上がりができない。

 

■パーキンソン病の治療

パーキンソン病は、現時点では根本的に病気を治す治療はありません。そのため、「症状の緩和」が治療の目的となります。治療方法にはいくつか種類があります。

 

①薬物療法

ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補う薬を服薬します。治療の基本となる薬剤はL-ドパドパミンアゴニストの内服ですが、それぞれ長所と欠点があり、年齢や社会生活の仕方、病気の重さ、薬に対する反応などを考慮して、うまく組み合わせ薬用量を決めます。病気が進行するにつて、薬が効かない時間が出てきたり(ウェアリング・オフ現象)、薬が効きすぎて意思に反して手足が勝手に動いたり(ジスキネジア)といった運動合併症が出てきます。

 

②リハビリテーション

リハビリテーションを行うことで、発症から長い期間が経っていても移動や食事、入浴などの日常生活の動作で介助を必要とする場面が少なくなることが期待できます。また、運動は服薬の効果を高めることもわかっています。

 

③外科治療

薬だけでは症状を改善するのが難しかったり、運動合併症が重くなったりした時に脳深部刺激療法が検討されます。脳深部刺激療法は、脳の深いところに細い電線を手術で挿入し、その電線に弱い電気信号を送る装置を胸の前部に埋め込むというものです。

 

■パーキンソン病と難病指定、メリット

2015年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病新法)が施行され、パーキンソン病を含む110の指定難病(2015年7月1日より306疾患、2017年4月1日より330疾患に拡大)に対する難病医療費助成制度が始まりました。以前の制度と変わった点や難病医療補助制度の注意点についてまとめたので参考にしてください。

 

【認定要件】

「診断基準」及び「重症度分類」を満たすことが認定要件です。

・ホーン・ヤール重症度分類Ⅲ度以上で生活機能障害度Ⅱ度以上。

・軽症者(医療費助成の要件を満たさない場合)であっても、1か月の医療費総額が高額である場合、医療費補助の対象となります。

 

【申請について】

・特定医療費の支給認定のための申請が必要です。

・特定医療費の支給認定の更新(原則1年)が必要です。

・都道府県から指定を受けた指定医に限り特定医療費支給認定の申請に必要な診断書を作成することができます。

 

【助成を受けられる費用は?】

・助成を受けられるのは、認定された難病について、都道府県の指定する指定医療機関で受けた医療等に係る費用のみです。(指定医療機関とは、都道府県から指定を受けた病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションです)

 

【自己負担割合】

・利用者負担割合は原則2割となります。

・経過措置期間は、外来、入院、薬局、訪問看護を合算して自己負担上限額が算出されます。

・保険調剤薬局(院外薬局)や訪問看護の利用の際、自己負担が発生する場合があります。

・自己負担上限額が変わる場合があります。※ 所得によっては自己負担額が増える場合があります。

 

【入院時の食事自己負担額】

・全額自己負担となります。

 

■利用できる公的医療制度

パーキンソン病は、根本的治療法がなく治療が長期にわたることから、経済的負担や介護負担が本人・家族に重くなります。そのため、療養環境改善を目指した様々な公的支援制度が設けられています。パーキンソン病に関連する公的支援制度には、難病の医療費助成制度、介護保険制度、身体障害者福祉法、障害者総合支援法、成年後見制度があります。ただし、これらの支援制度を利用するためには、それぞれの専門窓口に申請する必要があります。

 

①難病の医療保険制度

都道府県知事の指定する指定医療機関で受診した場合、健康保険の自己負担割合を3割から2割に引き下げ、かつその一部または全額を公費で負担する制度です。詳細は前の項目で説明しているのでご覧ください。

 

②介護保険制度

40歳以上の介護保険加入者が、何らかの支援や介護が必要と認定されると、費用の1割負担で介護サービスを受けることができます。

 

③身体障害者福祉法

パーキンソン病の進行によって身体動作に支障をきたすようになった場合は、身体障害者手帳の交付により、さまざまな支援を受けられるようになります。症状が変動するパーキンソン病では判定が困難な場合もあるといわれています。

 

④障害者総合支援法

症状の変動などにより身体障害者手帳の取得はできないが、一定の障害のある方々も「障害福祉サービス」を受けられるようになっています。ただし、介護保険制度の対象となっている患者さんは、介護保険制度が優先されます。

 

⑤成年後見制度

パーキンソン病の進行により認知機能の低下、判断能力が不十分となり、不動産や貯金などの財産の管理、高額な商品の購入や介護や施設入所に関する契約の締結などが難しくなった場合に利用できる制度です。判断能力の不十分な方々の保護と支援をしてくれます。

 

いかがだったでしょうか?パーキンソン病について理解していただけましたか?パーキンソン病は、現時点では根本的に治すことができないため、病気と長く上手く付き合っていくことが必要です。パーキンソン病になってしまったとしても、難病医療補助制度を活用することで長期的な治療において金銭的な負担も軽減することができます。