「ギランバレー症候群」という難しそうな病名。実は、ジョルジュ・ギラン氏とジャン・アレクサンドル・バレー氏というふたりの名前の一部をとってつけられている免疫性抹消神経障害の病名です。

 

このギランバレー症候群とは、病名を聞いただけでは、一体何がどうなってしまうのか、原因はどういうものなのか分からない方もいらっしゃいますよね。

 

そこで今回は、ギランバレー症候群の発症には、食べ物がどう関係しているのかを踏まえて、ギランバレー症候群の症状や原因について解説します。

1.ギランバレー症候群について

手足が痺れる、足が動かしにくいといった手足の麻痺やコップが持てない、ペンを持って字がかけないといった筋力低下などの症状が起こる病気です。初期の段階では、風邪のような感じやなんか違和感を感じるといった症状を訴えて病院へ受診される人が多いです。軽症の方から重症の方まで個人差の大きい症状です。

 

ギランバレー症候群は、難病法の難病指定はされていませんが、難病性疾患といわれています。発症頻度は、子どもの場合10万人に1人、成人の場合10万人に1〜2人といわれています。

1-1.神経のしくみ

ギランバレー症候群とは、末梢神経が何らかの理由で障害された結果、体の末端である手足の筋力低下や痺れなどの麻痺症状などが現れます。この障害をうけた末梢神経は、手足や指差しなどを動かす運動神経、物に触れたことを感じる感覚神経、呼吸や消化、循環などを調整する自律神経というものがあります。

 

運動神経や感覚神経は有髄(ゆうずい)神経でできています。この有髄神経とは、軸索(じくさく)という一本の柱に、髄鞘(ずいしょう)というロールケーキのようなものが間隔をあけて巻き付いてできています。運動神経は、脳から手に向かって「手を動かせ!」と運動の命令が伝わっていき、手を動かすことができます。感覚神経は、手でコップなどの物を触ったときに、手から脳に向かって感覚の情報が伝わっていき、コップなどの物を認識します。運動神経も感覚神経もこの軸索と髄鞘に命令や情報を伝えていくのです。

 

この軸索(じくさく)や髄鞘(ずいしょう)が切れてしまうなどの障害が生じたときに、運動の命令や感覚の情報がうまく伝わらない状態になってしまうのです。これが手足の麻痺などの

運動麻痺や感覚障害を引き起こすのです。

1-2.ギランバレー症候群の原因

ギランバレー症候群は感染症が引き金となって発症するといわれています。なぜ、感染症が引き金となるかは明確にわかっていません。

 

しかし、細菌やウイルスなどによる感染症になった場合、わたしたちの体は細菌やウイルスを排除し、体を守る働きをして闘います。これを自己免疫システムといいます。細菌やウイルスと神経には似ている部分があるため、自己免疫システムが誤作動し、神経を攻撃することで、ギランバレー症候群が発症するといわれています。

 

ほかにもワクチン接種や薬の服用が原因になることをあります。

1-3.脱髄型と軸索型

ギランバレー症候群は、大きく分けると脱髄型(だつずいがた)と軸索型(じくさくがた)に分類されます。ギランバレー症候群を発症してから症状がピークになるまでの進む早さや先行感染症の原因などの違いがあります。

 

脱髄型の場合は、ギランバレー症候群を発症してから比較的ゆっくり進行し、だいたい2週間ほどで症状のピークを迎えます。先行感染症の原因が、上気道炎やサイトメガロウイルス、EBウイルスなどといわれています。

 

軸索型の場合は、ギランバレー症候群を発症していからだいたい1週間ほどと、脱髄型から比べると速い速度で進行していきます。先行感染症の原因が、下痢をともなう胃腸炎やカンピロバクターといわれています。

1-4.自然回復と重症症例

ギランバレー症候群に患った(かかった)多くの人は、発症からはパパと半年以内に症状が自然と回復して、完治していきます。

 

しかし、症状が重症化していった場合、呼吸筋の麻痺により呼吸困難になることや不整脈、血圧の変動などがみうけられます。この場合、人工呼吸器などを使用し、集中治療室

(ICU)での呼吸、心臓などの循環器系管理をしなければなりません。また、手足に痺れが残るなどの後遺症が残る人もいます。

2.ギランバレー症候群と食べ物

ギランバレー症候群は、直接これを食べたから発症してしまうということではないようです。ある状態の食べ物を食べてしまった結果、食中毒を発症し、ギランバレー症候群の引き金となってしまうのです。そのある状態の食べ物に挙げられているものが、生や半生状態の鶏肉や卵といった食材です。なぜ生や半生の鶏肉や卵が食中毒を起こすのかといいますと、そのような調理が不十分な鶏肉などの食肉、鶏や豚のレバーなどの臓器にはカンピロバクターという細菌が付着し汚染していることがあり、それが体内に入ると増殖して下痢などを引き起こします。カンピロバクターという細菌は、ギランバレー症候群の発症を誘発する起因のひとつで、特に有名な細菌です。

2-1.カンピロバクター感染症について

ギランバレー症候群を調べていくとどこの記事にも載っているほど有名な「カンピロバクター」。食品を扱う責任者や業者の間では、知らない人はいないでしょう。このカンピロバクターで起こる食中毒は、カンピロバクター感染症と呼ばれ、カンピロバクター属の細菌であるカンピロバクター・ジェジュニという細菌が原因で起こります。日本では、1年を通して発生していますが、特に5〜7月、10月以降の行楽シーズンに発生しています。

 

カンピロバクターは、生育に酸素を必要とせず、大気中の酸素濃度だと発育できません。酸素濃度が5〜10%、温度は34〜43度の環境を好み、発育しています。しかし、冷蔵、冷凍の温度でも生存はし続けます。また、大気中にいることはできず、乾燥に非常に弱いです。ニワトリやウシ、ブタなどの家畜のほかにもネコやイヌといった身近なペットも常在菌として腸管内に保菌しています。

 

カンピロバクター感染症の症状は、下痢、腹痛、嘔吐、発熱、頭痛、倦怠感などがあります。下痢が続くことで、脱水に陥る可能性もあります。通常は、2〜5日で回復するのですが、なかには再発することもあります。

2-2.食べる前の注意

カンピロバクター感染症などの食中毒を予防することで、ギランバレー症候群の先行感染を予防する。引き金を引かないようにすることが大切です。

 

市販の鶏肉は、カンピロバクターに汚染されている確率が高く、鶏レバーや鶏のさしみ、鶏のタタキなど、生の状態や加熱不十分な状態の鶏肉で食中毒にあった件数が多いです。

2-3.調理の際には

カンピロバクターの特徴からみて、カンピロバクターや食中毒を予防するには、食材に十分な加熱処理(1分間以上、75度以上の加熱処理)をするということも大切ですが、調理器具や食器の消毒もしましょう。熱湯をかけて、十分乾燥させるとよいです。食中毒の原因細菌やウイルスの汚染を防ぐ意味で、食材の保存する時や調理する時は、野菜や果物などとの接触を防ぎましょう。

 

また、自宅で飼っているネコやイヌの尿糞の処理をした場合は、調理前に関わらず、その都度、十分な手洗いをしましょう。かわいい家族ですが、カンピロバクターを保菌していることを頭にいれておき、ともに安全に生活していきましょう。