何気ない日常生活を送っていたある日、急に自分の身体が動かなくなっていってしまったら?これってなに?!どうなってしまうの?とパニックになりますよね。行き場のない不安と自由の利かない身体に恐怖を感じます。
しかし、そういった不安や恐怖をそのままにせず、今自分の身に起きている麻痺症状や違和感が「ギランバレー症候群」とはっきりわかるまで症状が進んでしまう状態や患ったらどうなるのか、それはどんな病気なのかということ。また、「ギランバレー症候群」の後遺症がどの程度残っていくのかなど、気になるところを解説していきます。
1.ギランバレー症候群とは
ギランバレー症候群とは、コップや箸などを触ったと瞬時に脳へ情報を伝達する神経である感覚神経や脳から手や足などを動かせと手や足に指令を伝える神経である運動神経が妨げられて手足が痺れるなどの感覚麻痺や手足が動かなくなるなどの運動障害が起こる神経疾患です。
自分の身体に入った細菌などをやっつける抗体が何らかの原因により、誤って自分の身体の組織に攻撃してしまう自己免疫反応によって起こる免疫性の末梢神経障害の疾患といわれています。
多くの患者さんは自然と回復していくのですが、稀に、重症化することもあります。子どもから年齢の高いお年寄りまでのどの年齢層の人も発症してしまう疾患で、成人男性が多い傾向にあります。
もし、このような麻痺状態や感覚障害、運動障害が自分の身に起きた場合は、医療機関へ行き、神経内科を受診して下さい。
1-1.先行感染
ギランバレー症候群と診断された患者さんの約7割の人に、感染症になってからギランバレー症候群を発症する先行感染というものが見受けられます。感染症の原因となる病原体として最も有名な菌が、細菌性食中毒で知られているカンピロバクターです。
カンピロバクターは、牛や羊などの家畜が常に持っている菌で、調理の不十分な肉を食べる、カンピロバクターに汚染された水を飲むというように体内へ侵入していきます。体内に侵入したことで食中毒が発生します。人や動物の腸管の中でしか増殖しないとといわれておりますが、比較的少ない菌が身体のなかにはいるだけで感染するものとなります。
ギランバレー症候群の発症原因は、はっきりと分かっていないことがあり、一般的には、風邪や感染症等の症状がもとでギランバレー症候群が発症するといわれています。また、ワクチン接種や医薬品の副作用で発症することもあります。
先行感染の有無につきましては、医師の問診を受けた際に、診断の手がかりとなりますので、しっかり伝えましょう。
1-2.麻痺状態
最初に病院へいくきっかけとなった症状として、足が痺れて動きにくいので歩き方がおかしい、または足が麻痺して動かないなどの下肢の痺れや麻痺が現れてきます。その後に指先の麻痺、腕などが動かないなど上肢の痺れや麻痺が現れてきます。
このように、上下肢麻痺症状は、筋力低下へとつながり、身体の下から上に広がっていきます。顔面などに麻痺状態が広まった場合は、物を飲み込めないなどの嚥下障害も引き起こしてしまいます。
1-3.重症化の症例
ギランバレー症候群の特効薬がないことから経過観察をする、合併症が起きないかの確認、呼吸や血圧、心拍数などの管理をする支持療法を受けることになります。しかし、経過観察中にわたしたちの足の部分である下肢の麻痺症状が進行してしまい歩行障害を引き起こすことがあります。また、呼吸を制御している筋肉が非常に弱くなり、集中治療である人工呼吸器が必要になるほど呼吸困難になる可能性があります。
これは、ギランバレー症候群を患(わずら)った人の5〜10%の人に見受けられます。重症化の症例として、嚥下障害にまで発展してきた場合があります。この場合、食事の際に、むせてしまうことや物が飲み込むことが出来ないので食事がしっかりとれません。脱水、栄養失調に陥ることがあります。
症状が急に進んでいく急性期に、血漿(けっしょう)交換や免疫グロブリン静注注射の投与の治療をすることになります。
1-4.自然回復
他の病気を患(わずら)うと投薬治療や手術といった治療を行うのですが、ギランバレー症候群の場合、患者さんの多くは、長く続くこともなく、6ヶ月以内で自然に回復していきます。
通常、自然と回復していく際に、重い神経障害などの合併症を発症することなく回復していきます。しかし、ギランバレー症候群の型によっては長引く場合があります。
2.ギランバレー症候群の診断と検査
3〜4週間前に感染症を患(わずら)ったかどうか問診によって病歴の確認をしていきます。問診だけでは、データが不十分なので、確定診断するために、問診の後に検査を行っていきます。
検査の際は、ギランバレー症候群の可能性がゼロではないので、急激に重症化し呼吸困難に陥ってしまっては困りますので、入院にて呼吸を観ながら行われます。血液を採取して検査する血液検査や筋肉や神経に異常がないかを検査する筋電図検査・神経伝導検査、身体の臓器や血管を撮影するMRI検査、腰髄液の採取をする腰椎穿刺(ようついせんし)を行います。血液検査では、糖脂質という末梢神経の構成成分に対する抗体が見受けられること、筋電図検査で特有の波形が見受けられること、MRI検査で圧迫や外傷等がないこと、腰椎穿刺で白血球が少なくなっていて、タンパクが増加していることなどの結果を持ってギランバレー症候群と確定診断します。
3.ギランバレー症候群の医療費
ギランバレー症候群は、難治性の急性疾患や難病といわれていますが、難病法の指定難病ではないので、医療費の助成というものがありません。
どの疾患でも、医師の診断や医師の指示による医療行為や看護、入院管理と治療受けた場合、医療費が発生します。治療を受けて、ギランバレー症候群の治し、克服していくのには、このような医療費がかかるうえ、衛生用品や着替えなど、医療費以外にもかかってきます。
医療費というものは、保険適用の場合、3割自己負担で病院へ支払いします。しかし、もともと掛かった医療費が高額だった場合、3割でもかなりの自己負担となってしまいます。例えば、月200万円の医療費がかかったとしたら、その3割である月60万円が自己負担金額となります。ギランバレー症候群を発症した患者さんで、成人の人なら仕事も行けない状態、貯金で工面できればいいですが、1ヶ月で完治というわけにもいかないことがあるかもしれません。さまざまな不安を抱えながらの治療となってしまいます。
そういった際に、高額療養制度を利用し、少しでも医療費の自己負担金額を減らしていきましょう。治療期間が長期にわたり、医療費が高額になることが想定された場合、限度額適用認定証を交付してもらい、病院の窓口に提出しておくとかかった医療費から差し引きされて、自己負担限度額の支払いとなります。この自己負担限度額は、被保険者の所得によって区分されているため、一概にいくらですとはいえません。詳細は、加入している保険証の団体へ問い合わせしてもらえると、申請の仕方も合わせて確認しておきましょう。
4.ギランバレー症候群の後遺症とは
一度治ってしまうと、再発する可能性は非常に少ない傾向にあります。ギランバレー症候群の患者さんの多くの人が、発症からの経過を観ていくと自然に回復していくので、ギランバレー症候群を患(わずら)う前の日常生活を送ることができるでしょう。
しかし、ギランバレー症候群の症状がかなり進んで寝たきりの状態になってしまった患者さんは、以前の生活に戻れるようになるまで時間が掛かります。ギランバレー症候群を患(わずら)った人のなかには、手足の痺れが残ってしまう場合もあります。
5.ギランバレー症候群で亡くなることは
ギランバレー症候群で亡くなった人は、患者さんのなかで数%ほどいます。ギランバレー症候群によって自律神経が正常に機能していかなくなると、心臓の調整がうまくいかず、不整脈を起こし亡くなってしまうのです。他にも自律神経の障害は、胃腸の機能を弱くさせてしまうので、腸管の癒着や腸の運動低下による内容物の排出がうまくできなくなります。これらが重症化し、亡くなる場合があります。
6.感染症の予防を
ギランバレー症候群の発症メカニズムはよく分かっていません。しかし、統計上の傾向として、風邪や下痢の症状を伴う感染症が引き金になっていることが多いです。まずは、目に見えない細菌やウイルスが相手なので、しっかり手洗い、うがいなどで、感染症を予防していきましょう。
人の集まる場所に行くときは、時間をずらして行く。乾燥しているときは加湿を行う。疲れているときは、十分な睡眠をとる。栄養をとり身体をあたためて免疫向上に努める。
鶏肉や豚肉を調理する際は、良く火を通すことで食中毒を防ぐことができます。調理中は、生肉に触れる手に傷がないか注意し、手袋を使用するなどと工夫しましょう。少しの注意が、こういった感染症などの予防につながっていきます。
手足の痺れなど、いつもと違うちょっとした変化でも、あれ?と思うことがあったら医療機関へ受診しましょう。これだけで受診するのはちょっとなぁと気が引けてしまう場合は、電話で相談してください。早期発見、早期治療が早期回復につながっていきます。